これからも日本で働く人が絶対知っておいた方が良い経済の話

相変わらず難しい話をすごく簡単に書こうとして、でもやっぱり難しくなってしまった・・・

ちょっと前だけど大手IT企業であるSAPのSAP Forum 2015 基調講演のパネルディスカッションがすごく面白かった。
モノを作りながらIoTを推進するコマツの野路会長、
その裏でデータを扱うSAPジャパンの内田会長、
そこに過剰供給の「今の日本」に切り込んでいく一橋大学の米倉先生がモデレータを勤めていた。

まずは結論から。
このパネルディスカッションの最終着地点を一言でまとめると、

「今は国境や業種を越えたバトルロワイヤルの時代だから、決断の遅い日本企業で働くのを止めて、イノベーションを起こす会社を立ち上げろ!コマツやSAPがお金出すから!(米倉先生談。笑)」

みたいな感じだった。ユーモアのある基調講演、久しぶりにIT企業のカンファレンスでそのキャスティングプロデュースのセンスの良さにテンションが上がったので、自分の考察をいれてまとめてみます。たぶん間違いとか偏見も多いんだと思うけど。

SAP forum

世の中にモノはもう多すぎる。これからは新しくものを作る事よりもそれらをどう活用するかを考えよう。

このパネルディスカッションは米倉先生の「ケインズは有効需要という麻薬を作った」という話から始まった。ちょっと難しいのでここは飛ばして下さい。

そもそも世の中のお金のやり取りは需要曲線(「何かがほしい」を表す線)と供給曲線(「何かを与える」を表す線)の均衡点(二つがバランスをとれるポイント)で成り立つ。「有効需要という麻薬」は簡単にいうと、需要は政府が意図的に作れば経済が回るよねという発想。例えば道路工事などの公共事業という需要(働く人が欲しい)を起こせばそれに応じて必ず供給(労働力を提供します)が生まれる。自然に自分が高まる状況を待つのではなくて、麻薬を使って意図的にテンションあげようぜ、みたいな話。
IMG_0004
で、そこで今考えたいのが実際日本ってそれで良いんだっけ?という点。「そこら中の道路ピカピカにするために仕事たくさんつくろうぜー!」をガンガンやってて良いんだっけ?という話。

不必要なモノやサービスをわざわざ新しく作っていることに早く気づきたいよね

例えば数年前までは良くマスコミの間で「車、ビール、テレビ・・・、若者のナントカ離れ」が取り上げられ、なんでだろうねーみたいな話がネタになりまくっていた。
そこで良く出てきた解決策として、需要(コレが欲しい!)が無くなってきたのでさらに新しい若者向けの車を作ろう!若い人が飲みたくなるビールを開発しましょう!みたいな発想がたくさんあった。

でも例えばオレみたいに別に新しいカッケー車とかそんな欲しくないし、テレビ?つまんねーじゃんgoogleがあれば良いよ、と思う人が増えているはず。確かにオレは今のおっさん達の若かりし頃の様々な形のExcitingを聞く限り、昔と今の若者は環境が大きく違うゆえに物欲や仕事の達成感みたいなものの感覚が結構違うので、このディスカッションはちょー同意でした。今はモノが多すぎるから、言い換えると供給が多すぎるから、需要も追いついていない状態。米倉先生はそんなメッセージを込めて話していた。

だから有効需要じゃない何かが必要になってくる。

これからのビジネスのポイントは業界を超えたエコな経済

これからはITに限らずあらゆる業種でIndustry 4.0が大きなテーマになってくる。
このIndustry4.0はSAPの本国であるドイツ政府が力をいれて提唱している。歴史的な流れを言うと、遥か昔に蒸気機関車がでてきてIndustry 1.0が起こり、その後に2.0でエジソンが電気を発明し、3.0がIT革命。4.0はちょっとマトリックスみたいな話で、今IoTの世界で起こっているあらゆる事をサイバー空間と現実世界で行き来させデータを活用する「新しい産業革命」みたいな概念だ。ざっくり大枠だけは合ってるはず。どんどん難しくなってくるので詳しくはこちらの記事とかで。

このパネルディスカッションは最適生産から究極のエコへ導く事なのではないかという問いかけから始まった。しかもいきなり公開オープンdisから入る。「トヨタの水素自動車はあれって未来なのか?」と。
これがまたすごく納得のいく例だった。ちなみにこれもまた米倉先生。

ガソリンではなくて水素を使う車を動かすために、街中にそのステーションを数多く設置する必要があり、それって先進国しか作れないよね、みたいな事を言っていた。これはモノづくりの発想でしかない!とビジネス界でのビーフを仕掛けていました。なんかカッコよすぎた。

それを受けて、Industry 4.0が「究極のエコ」だとする理由についてgoogleが例に出された。

先日無人走行のテストドライブを公道で終えたGoogle自動車、これは基本的には他の車にぶつからない前提なので、例えばドライバーの席の周り以外はペラペラのアルミでもよい。そうすると生産コストが大幅に下がる。なるほどーという感じ。たぶんこのあたりが「最適生産」のテーマ。

そしてさらに、そんな車が増えると交通渋滞を解消するための地下鉄を作る必要がなくなる。そうすると莫大な公共事業予算が浮く事になるから、それを政府としては教育などに回せるよねと。

最初に言ってたエコってそういう事か!と感心してしまった。


新しくものを作るのではなく、それらをどう活用するかとは?

パネルディスカッションの前段で冒頭にSAPジャパンの福田社長からSAPの紹介があった。IoTなどの領域で話題になっている4社を事例にあげていた。これらの企業はいづれも今までのモノ売りの仕組みではなく、情報のやり取りがビジネスのキーポイントになってくる。

Uber 世界最大のタクシービジネスを展開するタクシーを一台ももたない会社

AirBnB 宿泊ビジネスを展開するホテルを一軒も保有しない企業

Google 無人自動車の開発に乗り出し、つい前日公道での走行テストを実施

UPS 在庫管理したものを配送するだけでなく50店舗に3Dプリンターを配備してパーツなどの受発注製造を開始

 

だから無駄なものを必死こいて作って「売れねー!でも気合でがんばろーぜー!」とかやるんじゃなくて、そんなこと日本語でしかも日本の中でやってても疲弊していくだけなので、まずは発想を変えたい。

世界に目を向けるとドイツを除く先進国は軒並み財政赤字。
IMFの統計で日本のGDPは世界3位に。
そして自殺率は9位という事実がある。

米倉先生の言葉を借りると今は国境や業種を越えたバトルロワイヤルの時代だから、発想を今までのそれとは全く違うものをもっていたい。次なにしようかな。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です