山口周「今日お伝えしたい10の事」(後編)
山口周「今日お伝えしたい10の事」(前編)
自分の「正しさ」にこだわらず、他者を傾聴する
これ自分の考えている正しさに意味がないという話です。
これからバスケットボールのパス回しが始まります。で、白いシャツを着ている3人がパスを出した合計を数えて欲しいんですね。
じゃあどうぞっ
これ統計的に言うと成人の半分の方がゴリラが出てきた事に気づかないんですね。で、回数数えなくて良いですよと言うと100%気付くんです。
回数を数えてください、と私が言ったのは、ビジネスでいうとKPIを与えたと言うことになるんですね。その数値KPIを追うようになると、ものすごい変化が起きても気づかなくなるんですね人間は。
それは脳の仕組みでしょうがないですね。
何も指示をしないと左側のDefault Mode Networkの状態で見る事になります。
ぼーっとしている状態ですね。無意識に広い範囲にレーダーを照射します。
逆に何かに注目してくださいというと右側のCentral Executive Networkになります。
茂みからガサガサっと音がするとライオンが出てきたときに食べられちゃうと思いCentral Executive Networkになりレーダーを照射するわけですね。
この二つのネットワークは基本的には同時に立ち上げられません。で、ものすごいアイディアを思いつくときってDefault Mode Networkなんですね。
ちなみにですね、いわゆるエリートというのはCentral Executive Networkを下らない事にも起動しっぱなしでいられる人という事なんですね。
あの受験ってそうなんです。あれどう考えてもバカなんですよ。
“この三角形の中のほにゃららの面積のこのほにゃららが一致できる事を証明せよ”
・・・だからなんだよ、と思うわけです。くっだらねえ、アホみたいだ、と。
そういうのをバカらしいと思わずにCentral Executive Networkを起動しっぱなしのエリートは受験に合格できるんです。
もっというと、与えられているゲームに埋没すると、例えば先ほどのケータイの話で言うと、いついつまでにこういう機能を作らなきゃ行けない、カメラの画素数をあげなくちゃいけない。
みんなKPIでがんじがらめになっているわけですね。
そこにタッチパネルが実用になりそうだと、世の中にIphoneがゴリラのように出てきてもケータイ会社の人達は誰も気づかずにゴリラにぶっ飛ばされたという状況です。
自分が見えているものが全部じゃない、他の人と違うものが見えている、哲学の用語でエポケと言いますけども、これだけいろんな変化が大きい世界では自分の正しさをエポケするというのが重要なんじゃないかとおもいます。
嫌われる事を恐れない
リーダーシップと言われて誰を思い浮かべますかと言われるとこういう人たちが出てきます。
ガンジー、ケネディ、織田信長、、、これ共通項はなんだかわかりますか皆さん?
全員殺されているということです。
リーダーシップと言われて筆頭に上がってくる人たちは殺されている、当然めちゃくちゃ憎まれていたって事なんですね。
何か変革しようとするとすると当然敵をつくるわけですよ。必ず明暗のポジションをとるわけです。
「嫌われる勇気」というのがベストセラーになりましたけれでも。
昭和的な誰にでも愛されるという調整のリーダーも大事ですけれども、変革を起こすには嫌われる勇気が必要ですよね。
失敗するなら若いうち
特に大企業の中ではあまり失敗出来ないのでそれができる人とは大きな差が出てきます。
パラレルキャリアっていうものの中で何かを失敗するという経験がある人とそうでない人とは大きな差が出てくるんですね。
これみなさんご存知ですよね、コルグの学習サイクル。
日本で問題が起こっていると思うのは、みんな作業はたくさんできるんですけれども、自分で考えて何かうまくいく、失敗するという経験がなかなかできないわけですね今の若い人は。何か失敗すると上司のせいになるんですね。
この前楠先生と本を出しましたけど、良いビジネスマンにはセンスが必要なんですね。センスは色々な経験によって磨かれていいくと思うんです。
スキルでは整理できないんです。全人格的に決めるという事をなんどもやっていかないと。若い時は学習能力はありますので、失敗しても得られるものが大きいので、しかもその学びが活かせる場面も多いので、ネットプレゼントバリューが大きいんですね。しかもコストは小さい。
年齢が高くなれば学習能力が下がり、高くなるほど、手堅く手堅くという風になっちゃって、事業が縮小されていき、大胆な決断ができなくなる。
あるプロジェクトでやった調査ですけれども、大成功したヒット商品を作っていたチームのリーダーは共通して20代で数億円規模の損失を会社に出させている。これはね、学びますよやっぱり。本当に会社辞めた方が良いのかとか、みんな七転八倒したのに失敗したっというのを何度も経験しているんです。
逆に今のヒット商品が出ないというチームの話を聞いてみると、30代になって自分で商品開発に関わった事がないと言うんですね。如何に若いうちに打席に立って積極的に失敗していくかってのが大事になってきます。
今ってイノベーションが凄く大事とよく言われますよね。イノベーションの価値がインフレしている。でもイノベーションってなかなか出て来ない。それは失敗はデフレ化していてコストが下がってきているって事なんですね。
今は昭和と違って調査結果を精密にスキャンして開発する、というのが勝ちパターンでしたけれども、今って口コミだけで告知するなど、あらゆるコストが下がってきているんですね。
クリスアンダーセンがMAKERSやFREEという本で書いたりしていますけども、トライアルするコストがものすごく下がってきているんですね。
慎重になりすぎると、機会費用が発生するわけですね。ただし今は失敗のコストが機会費用より小さくなっちゃってるわけなんです。
なのでやっちゃった方が良い。
アマゾンは70の新規事業に2/3は1年以内に撤退しているんですね。PDCAではなくDCPAみたいな感じです。ただこれがなかなか難しくて。
5年前に野村総合研究所がとった調査で、日本の大企業経営者1,000人ぐらいににとった「次の経営者に求める資質」をきいたところ、
1が決断力 これはまーわからなくもないですね。
2が創造性
3が結構ヤバくてですね、不退転の決意 だったんですね。
不退転の決意って言われたら何も始められないですよね。笑
アマゾンの場合は「退転の決意はあるな?」と言われるわけです。「はい、いつでも辞められます」と。VUCAなんですからわからないですよね。Jeff Bezosが言い出したAmazon phoneなんて8ヶ月で辞めてますからね。
なのでパラレルキャリアっていうのは失敗をするという意味で大切かなと思います。
最大の武器はモチベーション
どれをみても敗者のほうがブランドもある、リソースもある。
ではなぜなのかというと、左側の勝者は自分がやりたがっている人がやっている。自分で夢中やっているものと、上司からやれと言われてやっているものを比べると絶対に後者は負けるに決まっているんですね。
やりたがっている人にやりたい事をやらせる、というモチベーションポートフォリオていうのは人事的にも大事ですし、個人の働き手にとってみると、夢中にやれる事ができているかどうかというのが自分の成功に繋がるかどうかという意味でとても大事になってくるんですね。
それを見つけられるかどうかという意味でパラレルキャリアはポジティブな影響があるんじゃないかという事ですね。
提案はつぶされる、ネットワークを動け
イノベーションのアイディアはほんとんどの人は評価できないんですね。目利きが非常に難しい。
一橋大学の研究によると画期的なアイディアを見抜ける人は4%ぐらいらしいですね。
大体はアイディアを提案しても「一回死んだ方が良い」とか「他者でやってくれ」とか言われているということなんです。
ではうまく行ってる時は何をやっているかというと、拾う神を見つけるという事なんですね。アイドルとかバンドのオーディションに近いイメージ、ビートルズもオーディション落ちまくりましたけども。
粘り強く自分のアイディアを買ってくれそうな人をずっと見つける。ネットワークの中を動いて成功いているっていうのがイノベーションの共通項です。
上司に潰されてもこのネットワークの密度が高いと、
味方が味方を呼ぶ、その人のアイディアが活かせられる可能性が高まるということです。