山口周「今日お伝えしたい10の事」(前編)
先日、株式会社エンファクトリー主催のイベントで山口周さんが登壇した。その内容をほぼそのまま4割ぐらいを文字起こししてみました。
みなさんこんにちは。
いまね、世の中は大きく変わってきていると感じています。僕は電通という会社にいて、ある意味ではパラレルキャリアの巣窟みたいなところがありましたけれども。
逆に会社って本当にあんのか?と思うんですね。「会社」が出来たのはここ100年ぐらいの事で、ずーっと人類ってのは会社に勤めないで生きてきたわけです。「会社」もすぐなくなるんじゃないなと思うわけです。
若い人が組織・社会にとっても大事な時代
日本の会社は年取ってる人のほうが給与が高いんですね。なんでだかよく分かりませんね。
ちなみにみなさんわかりますか?この数字。
創業者の年齢です。GAFAの創業者は平均すると24歳で、それに牛耳られる日本の大企業の人達は振り回されてる訳ですね。
そこで日本の企業経営者の方から相談頂くんですね。最近の課題は若手の人材育成だと。なるほどですね、と。
「失礼ながら御社の時価総額はどれぐらいで推移していますか」と聞くと、
「いやーほとんど伸びてなくて、というか目減りしている」と。
「まさに皆様が現場の舵取りをしていてここ20年の間にそういうパフォーマンスしか上げていない皆様に入ってきた若手が教えられるんですよね?」と言うんです。
・・・大変不愉快そうな顔して帰っていくんですよ。
だいたい取引したくない会社にはそういう質問してくるんですね。笑
相対的に年長者の価値が目減りしている時代
価値は年齢フリーの時代に来たんですね。価値は出したものが偉いという時代なんです。若い人の価値が低いという構造になっている会社は僕は辞めた方が良いといっています。
年長者の価値が目減りしている。僕はそれを「クソ上司」と呼んでるんですけれども。これ別に今に始まった事ではなくて、キャテルという心理学者が言った事ですが、
流動性知能のピークは10代半ばにきます。すごいアイディア一発で出すというものです。一方、結晶性知能は積み重ねていくって事ですね。経験に基づく大人の知恵などです。
いまIBMやAppleは入社条件に大学卒業というのを無くしましたよね。これ非常に正しいと思います。流動性知能のピークを見ると採用するにあたり高校入るのを待ってられないですよね。
積み重ねは世の中が変わらなければ価値があるんですよ。どんどん世の中が変わってくると、日々ラーニングしていないといけないですよね。
例えば20世紀の大発見に必ず出てくるこの人たちは全員非専門家なんです。素人なんです。
ダーウィンは生物学者ではなく地質学者
グラハムベルは理系ではなく音声学の先生
フランシスクリックは生物学者ではなく物理学の先生
組織や社会の成長には「前任者の否定」が必要
日本でなんで40年から50年の間にいろんなイノベーションが起きたかというと
GHQの公職解体がいろんな人の異種混合が起きて素人の人たちが次々に発明を生んだんです。
さて翻ってその後90年代からカンパニー制で同じ事業ばっかやってきた専門家が出てきてイノベーションが衰退しました。
KYたれ
機長と副操縦士がいる時に、事故の確率は機長が操縦を握っている時の方が遥かに高いんです。
微妙にじゃないですよ、遥かに高いんです。これは統計にも出ています。
大韓航空機のグアム着陸の話。
下の人間がどれだけ上司に物を言えるかと言うのが大事です。
ちなみにPDI=権利格差指標でいうと日本は54、低い数字であればあるほど、上の人に反論してくる。
これみて皆さん何か気づきますか?どういうグループに分けられるか。
一つは儒教ですよね。キリスト教は神様を元に考えますけども、儒教は順番万能主義、まずは親子という順番ですね。もう一つは君主と下臣、基本的に問題が起こったときは上司が尊重される事が道徳だって事なんですね。
一方プロテスタントの国は反論しろっていう事を国教に掲げている国は権力格差が小さくてイノベーションランキングが高い。
ちなみに航空機の事故、また医療事故と権力格差指標の相関関係を見ると綺麗に一致するんですね。
例えば医療事故の場合はメディカルドクターが何かおかしいなと看護師が思った時に反論するかしないかで違ってくるんです。まーわりとわかりやすいですよね。
「正しさ」に価値が認められない時代に
正しいってことに価値がないって話をしたいとおもいます。正解のコモディティ化って事です。
2007年に生まれたモデル、こうやって並べてみると一番右端だけ残って他は全部世の中から消えた訳です。
これはなんでかと言うと日本メーカーは全員正解で戦ったからなんです。
産業の世界ではみんなが正解を出すとみんな0点になるんですね。みんな消費者調査して、統計出して、エンジニアに統計結果をもとに設計すると、そりゃ同じものになりますよね。
そうするとみんな吉野家化するんですね。早い、安い、うまい、なんです。なので当時日本のメーカーは年に二つもモデルを出していたんですよ。
そこで西海岸の会社から正解(サイエンス)じゃないアート的な提案を出された会社にたった3年の間に市場シェアの50%を取られる、産業市場に類を見ないほどのボロ負けをしたわけです。
通常負けるときはいくつか理由があるんですね。
まず関わってた人がアホだった、一生懸命やらなかった、資金が足りなかった、マーケットコンディションが悪かった、大体そんな理由なんですけども、ケータイメーカーに関わってた人達は日本の最優秀な人達だったんですね。
有名大学出てて、MBA持ってて、統計の知識があって、実直に経営学の知識を駆使して、顧客のニーズを精密にスキャンして、誠実に安く作った結果、その必然的な結果としてめちゃくちゃ弱いビジネスになったんですね。
これ何言ってるかというと優秀の定義を変えなければいけないんです。
君どうやってモノつくるの?と聞いた時に、
「マーケティングの知識、統計の知識があり、極めて実直です!」「あ、君はうちに来なくて良いです。」となるわけです。これ負けるビジネスの3要素ですよね。それよりも
「いや、直感すかねー、オレが思う良い感じのもの作りたいと思ってるんすよ。」「採用っ!」みたいなね。笑