「なんか新しい事」を始める人の探し方
「なんか新しい事」の始め方を書こうと思ったきっかけは、去年Lifestyleという東京発のベンチャー企業を、世に知らしめるための仕事をしてきた経験だ。
まず結論から言うと、新しいコトを始めるには自分で体験する事から全てが始まる。赤ちゃんが話し方を覚える、子供が自転車の乗り方を覚える、学生が顧客にモノを売る方法を学ぶ、なんでも体験しながらその必要性がわかってくる。これはExperience Marketingを提唱する前々職の博展での経験で学んだ部分も大きい。そしてその体験がワクワクしたか、みたいな、これが結構でかい。
そもそもこのブログ投稿自体が「体験してみる」事の一つだったりする。着地点がどうなるとかはあまり考えていない。
新しい事を始める人の探し方
まず体験してもらう事が最重要だとは思いつつも、常にそもそも彼らがいる場所を知らなきゃいけない。常に、というは業種や業界の習熟度などによってその人達がいる場所が変わると考えているからだ。
- 無料セミナーを開催して情報提供を行う
ちょー王道だけどあまりワクワクがない手法の一つ。
VRの様な流行っているキーワードがあると、情報収集しようとする人は多い。なのでPeatixなどを受け皿にいくつか無料セミナーを開催した。
ここでは3点、「提供内容、集客、開催場所」についてうまく条件を揃える事を考えた。特にまずは「VRの話を聞いてみたい人にはどんな人がいるのか」が知りたかったので、母数を増やしたかった。集客を倍増させるという意味で同じ目的を持つパートナー企業との共催という形で進めた。事業内容が若干似ていてもVRの様に市場をこれから広げていかなければいけない時期に、同業他社を敵視している会社は少ない。テンポ良く他社と目的共有しながら巻き込む動き方ができると味方が増えて見込み顧客が作れる事が実感できた。
そうすると、様々な個別の疑問がたくさん生まれてくる事に気づいた。この時に初めて参加者からちょっとしたワクワクを感じる。そのため意識が高めの人を少人数性で集める会を企画する方が良いかもと気づいてくる。 - ワークショップを開催して能動的な行動を促す
上記のセミナーは情報の一方通行になりがちなのに対して、ワークショップはさらにVRの世界に入り込んでもらえるイベントだった。特に参加者を能動的に動いてもらう良い機会になるので、より彼らにVRがなんなのかを感覚的に感じてより深い疑問を抱いてもらう良い時間になった。360度画像の撮影、その簡単な加工方法までを実際に機器を使って体験してもらう。参加者はセミナー参加よりも、もうちょっとワクワクしてくれる。ワークショップに参加してくれる人は、 自社に帰った時にVRの有用性を広めてくれるプチインフルエンサーになる事がわかった。 - 展示会に出展して業界周辺の企業を知る
展示会には業界の関連企業が集まるので、顧客や、パートナーになりえる企業、新しいアイディアなどがたくさん生まれる会話ができる。最近はビジネスネットワーキングや商談の機会を増やすEventhubなどのサービスも出てきているので、そういった機会創出はより簡単になったと思う。
展示会はそもそも誰かが誰かを探しにくるところなので、全体としてそういう雰囲気があり、他のバイアスのかかったビジネスイベントと比べて他人に話しかけられる人であれば絶好の空間だ。お互い意味のある会話をしていると実感している間は、ワクワクがかなり溢れ出る。
- メディア掲載などのPR戦略を実行する
これは以前の会社で優秀なメンバーがいたからこそ実感できた事だが、PRTIMESに新サービスや新動きについて広報する事も大事だ。もっというと、難易度は高いが、メディア担当者に直接依頼ができる状態になるともっと良い。プレスリリースの打ち方によっては問い合わせが見込める。PV絶対主義のネットの世界では特にこの露出に関する知見があるかないかでサービスやコトの広め方が変わってくる。 - 大企業は情報収集している部署にあたる
ワクワクを凝縮させた人たちがここにいる事が多い。こんな時代だからこそ、常にキャッシュに余力のある企業では新しい情報をキャッチアップするためのチームを組んでいる。医療、金融、商社、コンサル、大手メーカーなど他業種との掛け算でのミラクルを期待しながらアンテナをはりめぐらす人がアサインされたチームだったり部署がある。何年後には事業に!みたいな。この人たちは結構facebookなどで繋がって会話を進めてくれるので、そう言う意味では楽しく話題を共有できる。 - 合宿型カンファレンスに参加する
3日間泊まり込みで参加者とディスカッションを繰り広げる Marketing Agendaは多額の参加費を投資してくる感度の高い人が集まるので、とても良い出会いがたくさんあった。Marketing Agenda #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA
- アンテナを広げているチームメンバーを増やす
結構最終的にここがメインとなると確信しているが、VRを広げたいと思いながらいろんな世界の人との会話をたくさんしている人経由での仕事が圧倒的に多かった。ウェブ広告や立派な会場を借りてセミナーを開催する事よりも、お金をかけて展示会に大きなブースを構えるよりも、情報があまり流通していないVRの様な世界でのビジネスは人の紹介から始まる事が大きい。知っている人から見せてもらい、体験させてもらう、という人の方が次に進む確率は圧倒的に高い
上記6つの手法で、たぶんもっとあるけど、新しい事を始める人たちを探す事ができる。ちょー早く状況が変わるこのVRテクノロジーの世界は面白かった。ただ2017年は爆発的に売り込んでいくにはタイミング的には少し早かった。
今年に入りTechCrunchでもこんな記事が書かれている通り、2018年に入り、世の中のVR熱は落ち着いた。昨年、2017年の半ばにVR関連事業を展開する会社(ほとんどが経営者か事業責任者)50社を2ヶ月かけてインタビューしてきた。今回はその方々のお話を踏まえて書いている。
世間的にVRという単語は良く見るけど理解されていなかった
VRのあらゆる世の中の調査を見てみると、
- 2人に1人は「VR」という言葉は知っている
- 10人に1人は「VR」を体験した事がある
- でも「VR」は一時的なブームで終わらないと思う
という状況。流れが早いからもう徐々に変わってきているとは思うけど。
そしてPVをあげたいメディアから適当だったり曖昧な情報が出回るので、あちこちで間違った認識を持たれていく。これは VRに限らず、新しい事のほとんどが(特にポップで面白いやつが)こうなる気がする。今までAIとかビッグデータ、SNSマーケティング関連もかなりたくさんの間違った理解での依頼が多かった。
また日本のVRの会社はほとんどが元々映像製作かゲーム開発をやってる会社。ごく一部だけVR専業で尖ったサービスを展開するベンチャーが、大手企業から引き合いがあったり、シリーズAからBあたりまでの投資を受けている様なイメージ。
そもそもなんか良く理解されない「VR」にお金を出す人はどんな人なのか。
VRにお金出そうと思う会社のノリごとの導入メリットをあげるとこんな感じ。
- 「VRってなんか面白そうだからとりあえずやってみましょう!」が言える会社(大手キャリアがその代表例)
こういう企業は話題になるから宣伝効果が期待できるのと、各種メディアが取り上げてくれやすい。 - 「課題解決に繋がるならまずは少しだけテスト導入します。」とチャレンジしてくれる会社(VRはまだエンタメ要素が強いのでそんなに数は多くない)
先行優位性を生むプロジェクトは次のテクノロジー導入の知見が早くたまる - 「みんなやってるから弊社も導入したいですが10万円でできますか?」という会社
VR体験を実現するためのあらゆるものがまだコストかかる時期は無理な要望として消えていく。
新しいコトを打ち出していくには上記の1か2の企業と、少しづつ、長くても数ヶ月のスパンで実行してみて効果検証をしていくしかない。そして彼らは未来に投資しようとしてくれる人たちなので、ポジティブな会話ができて、既存の手法や文化、ルールを疑問視した良い意味で懐疑的な視点で世界を一緒に見る事ができる。
そしておそらく数え切れないほどのマーケティング理論やPR戦略に沿って効率の良い攻め方はたくさんあるとは思う。ただ大事なのは自分でその世界を感じながら動けているかどうかで、隣の人をワクワクさせられるかが鍵で、卓上の理論を信じ込みこの情報社会で迷子にならない事なんじゃないかと思っている。
生きるか死ぬかの選択肢に追われていない人としてこの世の中で生きているのであれば、
如何に楽しいコトを形にできるか、加えてその先に何かしらの課題解決をイメージできるか、
そんな考え方を大切にしていきたい。